医療機関だからどこでも同じ、ではありません

最近、刺青除去を謳うサービスや商品などが本当に多くなりました。

それだけ刺青を消したいと思っている人が

多くなっていることの表れだと思います。

当クリニックは医療機関なので医療としての刺青除去に取り組んでいますが、

世の中にはそれ以外の方法がたくさんあふれています。

そうした方法には根拠がないので、ここでは医療機関による

刺青除去治療にのみスポットを当ててお話をしたいと思います。

医療機関に限定してみても、以前と比べると刺青除去を行うところが本当に

多くなったと思います。中にはそれを専門とするというクリニックも見かけます。

これだけあると、どこに相談したら良いのか、

どこで治療を受けたら良いのか迷ってしまう方も多いと思います。

長年刺青除去に取り組んできた「老舗」として、思うところを

語ってみたいと思います。もちろん、「だからうちのクリニックにしなさい」

という宣伝だけに終始するつもりはありませんので、安心してくださいね。

医療機関選びの前に、大切なポイントがあります。

それは、刺青除去という医療が確立しているわけではないということです。

インフルエンザの治療であればこの薬、この方法ということが

全世界的に確立していますが、刺青除去は病気を治すわけではなく、

見た目を改善するための医療なので方法論はひとつではありません。

一般的に切除法やレーザー治療法などが普及していますが、

これも「その治療を行っているところが多い」というだけのことです。

ここで重要になるのは、これまでどれだけの患者さんを

受け入れて症例を積み重ねているかという点です。

確立されていない医療を行うのですから、

経験値やノウハウが重要だというわけです。

あまり経験がないところや、ニーズが高そうだから最近参入したというところで

「確立されているわけではない医療」を受けると考えると、

ご想像がつくと思います。

それともうひとつ、経験値が重要になることは刺青除去治療に

テンプレートのようなものがないという理由があります。

どんな人で、どんな刺青で、どんな色で、どんな部分で、

どんな大きさなのか・・・といったことを突き詰めていくと、

同じ症例が二つあることはありません。

だからこそ過去の症例や経験値から「引き出し」がどれだけ豊富かで

治療の質が変わってくることになるのです。

刺青除去は、世の中で思われているよりはるかにデリケートな医療です。

そのことを熟知した上で親身になってくれる医療機関が、

最終的には信頼できるという結論になると思います。

刺青(タトゥー)がサッカー観戦チケットに??

国が変われば価値観も変わるというのは、刺青に対する考え方も同じです。

欧米諸国では刺青に対する考え方が寛容でファッションの

一部であるという認識を感じることがとても多いですが、

そんな中でも現地メディアですら仰天するようなニュースが

ドイツから飛び出しました。

ドイツのヘルタ・ベルリンというサッカーのクラブチームが、

ファンサービスとして生涯使える入場券を進呈すると発表しました。

ここまでならそんなに珍しくないかも知れませんが、すごいのはその方法です。

生涯チケットは生涯紛失することがないようにする必要があるということで、

何と刺青を体に刻むことでそれが入場券になるというのです。

QRコードを刺青として彫り込み、それを読み込むと入場できるという仕組みです。

さすがにQRコードだけが刻まれているというのはデザイン的にも

面白くないということで、ベルリンの地図とクラブチームのエンブレムを

あしらったデザインの中にQRコードが自然に埋め込まれるという形のようです。

サッカー選手に刺青を入れている人は多いですが、ドイツではファンも然り。

このクラブチームのキャッチコピーは「ヘルタがあなたの皮下で生き続ける」

というもので、刺青で生涯チケットを進呈することにも特別な意味を

込めているようです。

こうしたことができるのは、刺青に関する技術革新もあります。

以前と比べると刺青の技術は格段に向上しており、

細かい図柄であっても正確に入れることができるようになっています。

この生涯チケット企画も、刺青の図柄に正確性がなければできないことです。

QRコードを読み込むことができなければ、

単に刺青を入れただけで何の意味もないのですから。

このニュースを紹介している記事でも述べていますが、

もちろんこんな企画が日本で受け入れられるとは到底思えません。

あの熱狂的な阪神ファンに刺青チケットを進呈するといっても、

やはりほとんどの人は躊躇するでしょう。

これこそまさに、刺青に対する西洋と東洋の考え方の大きな違いですね。

刺青除去の治療には失敗例もあります

患者さんのご要望に応じて、期待通りの結果を出すこと。

これが医療機関に求められる使命です。

しかし、刺青除去など保険外医療においてはそれが

必ずしも成立しない場合があります。

つまり刺青除去治療の中には、失敗する例もあるということです。

どんな時に失敗してしまうのでしょうか、その一部をご紹介しましょう。

刺青除去治療における最大の失敗とは、期待通りの効果

(つまり刺青が消えること)が得られないというものでしょう。

認識の違いも含めてそんな不満が起きるのは、

治療方法の選択ミスや医療機関の技術不足などが考えられます。

刺青除去治療はそれぞれの患者さんに合った方法を選択しなければ

最大の効果は得られませんが、技術不足により得意な治療法を

無理強いしてしまったために満足いく結果にならなかった、など。

風邪を治すといった一般的な医療と違い、

刺青除去には医療として確立されたセオリーがありません。

最適な治療法を選択して適切な治療を行うためには、

たくさんの症例によって経験やノウハウが蓄積している必要があり、

そうなると医療機関によっての差が出てきてしまうのは仕方ないことです。

どんな治療法を選ぶにしても、治療を受けた後のアフターケアがとても大切です。

相手はデリケートな肌なので、いかに傷跡や火傷の跡を

いかにきれいにするかというのは医療機関の技術ももちろんですが、

アフターケアがとても大きな意味を持ちます。

アフターケアの重要性や正しい方法をしっかりとご説明した上で、

患者さんがしっかりとケアできるということが成立してはじめて、

最高の結果が得られます。

このためには信頼関係も必要ですから、当クリニックでも

最初のカウンセリングや治療のご説明には特に時間をつかって丁寧に

行うようにしています。

せっかくの治療が失敗してしまっては、誰もトクをしませんからね。

実は当院のカウンセリングでは、刺青を消したいというご要望を

お持ちの方に対して、「消さない」という選択肢を提案することもあります。

なぜ?と思われるかも知れませんが、無理に手を出して悪い結果を招くことが

分かっているのにそれをお伝えしないことが良いとは思えないからです。

出来ることと出来ないことをしっかりとご説明して、

あらゆる選択肢から最も患者さんの利益になる方法を選んでいただくことが、

医療機関としての使命であるとも思うのです。

彫り師の有罪判決を受けて、業界団体が発足

大阪地裁で出された彫り師への有罪判決は、

現役の彫り師にとってとてもインパクトのあるものでした。

なぜなら、医師免許がない人が刺青を彫ることが

犯罪行為であると結論付けられたからです。

私も医師なので分かりますが、医師免許を取得するというのは

決して簡単なことではありません。

すでに彫り師として活動している人がこれから医学部に

入学をして国家試験を受けて・・・ということを考えると、

そのルートに現実味を感じている人はほとんどいないでしょう。

なら、どうするか?

今後顧客の依頼とはいえ刺青を彫るだけで医師法違反であると

断罪されてしまうのというのでは、商売として成り立ちません。

業界団体が発足したことには、こうした流れへの危機感が

相当あるものと思われます。

この業界団体の主張とは、医師法だけで判断するのではなく刺青という文化を

認めた上でそれを合法化する法整備をしようというものです。

確かに、彫り師という職業や刺青の文化は古くから存在します。

刺青を入れてほしいと思う人がいて、それに応えるプロがいるという関係性は

今に始まったことではありません。

刺青が社会からどういう目で見られるかということは別に、

刺青を入れたい人と入れる人という関係は昔からあります。

もともと、彫り師の世界はあまり表に出てくることはありません。

「カリスマ彫り師」という人がテレビなどに登場するわけでもありませんし、

どこに行けば刺青を入れてくれるのかということを

誰もが知っていることもないでしょう。

このことが一層、彫り師という職業を裏社会と関連付けて捉える人が

多くなる原因だと思います。

事実、アウトローの人たちの間で刺青は常識となってきて、

それぞれの組や組織に近しい彫り師という人たちもいます。

このような存在である彫り師の人たちが表に出てきて業界団体を結成、

法整備に向けて弁護士と協力をしながら活動をしていくというのですから、

時代は変わったものだと実感します。

業界団体としても全国に散らばっている彫り師の実態を

把握することから始めているようで、どれくらいの人数が活動を

しているのかすら分からない部分があるようです。

全てはこれからという彫り師の業界団体ですが、

刺青除去治療の現場で聞かれる後悔の弁に接していると

社会的な理解を得るための地道の努力が必要だと言えそうです。

中国で刺青を入れる女性が急増中

日本では社会からの冷ややかな目線もあって刺青に対する意識は依然として

ネガティブなものですが、中国では少々事情が変わってきているようです。

というのも、最近のニュースで中国人の特に女性の間で

刺青を入れることが大流行しているというものが出てきたからです。

もちろん、中国でも刺青に対する意識はそれほど良いものではありません。

文化的なルーツは日本と似ているので、刺青に対する意識も

日本のものと似ています。

しかし、報道によると中国全土で今やタトゥーアーティスト(つまり彫り師)は

20万人以上いるそうです。これはおそらく、日本の数百倍という規模でしょう。

日本と中国の人口比はほぼ10倍ですから、

その比率を考えると中国の刺青の流行ぶりが突出していることが分かります。

中国にも古くから刺青の文化があります。

昔は刺青を入れる刑罰があったり、その後はアウトローの人たちを中心に刺青を

入れる人が多かったというのですから、これってほとんど日本の感覚と同じです。

そんな感覚の中国で女性の間で刺青が流行っているというのですから、

日本で同じようなブームが起きているようなものです。

そう考えると、やはり時代は変わったものだと思わされます。

報道を見ても、かつての中国では刺青を受け入れる女性が

10%程度だったのに対し、今ではそれが70%ほどになっているといいます。

さすがに日本でここまで広く受け入れられているわけではないので、

最近の中国で起きている刺青ブームは明らかに日本とは別物です。

ただ、日本でもここまではいかなまでも刺青やタトゥーのブームがありました。

現在刺青を消したいという相談でお越しになる方の多くは、

ブームになった時に刺青を入れたものの、

その後の不利益や後悔によって消したいと思われている方々です。

もし同じことが中国で起きたとすると、20万人の彫り師が世に送り出した

「刺青の入った女性」の多くが刺青をやっぱり消したいということに

なるのではないかと危惧します。

その時に刺青除去治療の十分なキャパシティがあるのかどうかも分かりませんし、

それ以前にノウハウがなければならないので、

今の日本よりも深刻なことになるのではないかと思ってしまいます。